住宅ローン変動金利1%上昇シミュレーション|借入額別の返済額増加

日銀の金融政策修正が話題になるたびに、SNSでは「変動金利で住宅ローンを組んでいる人は大丈夫か」という声が広がります。変動金利は固定金利より低い金利で借りられる分、将来の金利上昇リスクを借り手自身が負う仕組みだからです。

とはいえ「金利が1%上がったら返済額がどれくらい増えるのか」を具体的な金額でイメージできている人は多くありません。この記事では、借入額別・金利上昇幅別に月々の返済額と総返済額の増加をシミュレーションし、あわせて「未払利息」という見落とされがちなリスクについても解説します。

なお、そもそも変動金利の仕組みを詳しく知りたい方は変動金利ローンとは何か — 仕組みと金利改定のルールを、固定金利との比較で迷っている方は変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきかをあわせて参考にしてください。

シミュレーションの前提条件

今回の試算は、以下の条件で計算しています。

  • 返済方式:元利均等返済(毎月の返済額が一定になる、最も一般的な方式)
  • 返済期間:35年(420回払い)
  • 当初金利:年0.5%(2026年時点の変動金利の目安として設定)
  • ボーナス返済なし、金利上昇後は残りの期間で新しい金利がそのまま適用されると仮定した単純計算

元利均等返済と、もう一つの代表的な方式である元金均等返済との違いについては、元利均等返済と元金均等返済の違いで詳しく解説しています。今回はより多くの人が選んでいる元利均等返済を前提にします。

元利均等返済の毎月返済額は、次の計算式で求められます。

毎月の返済額 = 借入残高 × 月利 ÷ {1 − (1 + 月利)^(−残り回数)}

月利は「年利 ÷ 12」で、残り回数は「残りの返済年数 × 12」です。この式に金利を当てはめることで、金利が変わったときの返済額を試算できます。

月々の返済額はいくら増えるか

まずは、借入額別・金利上昇幅別に、月々の返済額がどれだけ増えるかを見てみましょう。当初金利0.5%を基準に、+0.5%・+1%・+2%上昇した場合の月々の返済額(円)です。

借入額当初(年0.5%)+0.5%(年1.0%)+1%(年1.5%)+2%(年2.5%)
4000万円103,834円112,914円(+9,080円)122,474円(+18,640円)142,998円(+39,164円)
6000万円155,751円169,371円(+13,620円)183,711円(+27,959円)214,497円(+58,746円)
8000万円207,668円225,829円(+18,160円)244,948円(+37,279円)285,996円(+78,328円)

借入額8000万円のケースでは、金利がわずか1%上がるだけで月々の返済額が約3万7千円増えます。年間にすると44万円以上の負担増であり、家計への影響は決して小さくありません。

同じ1%の上昇でも、借入額が大きいほど増加額は比例して大きくなる点にも注目してください。4000万円なら+1万8千円台ですが、8000万円ではその2倍の+3万7千円台に達します。これは元金が大きいほど、上昇した金利分がかかる母数も大きくなるためです。

総返済額はいくら増えるか

次に、金利上昇が完済まで続いた場合の総返済額の増加額(概算)を見てみましょう。あくまで「上昇後の金利が35年間ずっと変わらない」と仮定した単純計算ですが、長期でみたインパクトの目安になります。

借入額+0.5%上昇時+1%上昇時+2%上昇時
4000万円約+381万円約+783万円約+1,645万円
6000万円約+572万円約+1,174万円約+2,467万円
8000万円約+763万円約+1,566万円約+3,290万円

借入額8000万円で金利が2%上昇した場合、総返済額は3,000万円以上増える計算になります。これは新車が何台も買えるほどの金額であり、「たった数%の金利差」が長期の住宅ローンではいかに大きな差になるかがわかります。

なぜ変動金利はここまでインパクトが大きいのか

住宅ローンは数千万円単位の借入を数十年かけて返す商品です。金利は残高全体に対してかかるため、返済初期のように元金残高が大きいタイミングで金利が上昇すると、利息負担の増加額も大きくなります。

逆にいえば、返済が進んで元金残高が減ってから金利が上昇した場合は、同じ上昇幅でも影響は相対的に小さくなります。借入直後の数年間は特に金利上昇の影響を受けやすい時期だと意識しておくとよいでしょう。

「5年ルール」と「未払利息」という落とし穴

ここまでの試算は「金利が上がったら、その分すぐに返済額が増える」という前提で計算しました。しかし実際の多くの変動金利型住宅ローンには、返済額の急激な変化を緩和する2つのルールが設けられています。

  • 5年ルール:市場金利が上昇しても、月々の返済額は5年間据え置かれる
  • 125%ルール:5年後に返済額を見直す際も、新しい返済額は見直し前の125%を上限とする

一見すると借り手にやさしい仕組みに思えますが、ここに大きな落とし穴があります。返済額そのものは据え置かれていても、その裏側では「返済額のうち利息が占める割合」が金利上昇に応じて増えています。もし上昇した金利分の利息が、据え置かれた返済額では払いきれないほど大きくなると、支払いきれなかった利息分は「未払利息」として繰り越されます。

未払利息が発生すると、次のような事態が起こり得ます。

  1. 毎月の返済額を支払っていても、元金がまったく減らない
  2. 未払利息が積み上がると、元金の残高がむしろ増えてしまう
  3. 5年後の返済額見直し時(または完済時)に、未払利息分をまとめて精算する必要が生じ、想定以上の負担増(いわゆる「支払いショック」)に直面する

つまり、5年ルール・125%ルールは返済額の急上昇を「先延ばし」にする仕組みであって、金利上昇のコスト自体をなくしてくれるわけではありません。むしろ、返済額が変わらないことで金利上昇に気づきにくくなり、対策が遅れるリスクもある点には注意が必要です。

なお、フラット35などの一部の金融機関・商品ではこの5年ルール・125%ルールを採用していない場合もあります。契約中の金融機関がどのルールを採用しているかは、必ず契約書や金融機関への確認で把握しておきましょう。

金利上昇に備えてできること

数字を見て不安になった方もいるかもしれませんが、対策がないわけではありません。

  • 繰り上げ返済で元金残高を早めに減らしておく:元金が小さいほど、同じ金利上昇幅でも影響額は小さくなります
  • 家計に金利上昇分の余力を持たせておく:本記事の試算のように、+1%・+2%上昇した場合の返済額を事前に把握し、その差額を貯蓄・投資に回さず備えておく
  • 固定金利への借り換えも選択肢に入れる:金利上昇局面が続きそうだと感じた場合、変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきかを参考に借り換えを検討する
  • 返済が厳しくなる前に金融機関へ相談する:返済継続が難しくなりそうな兆候があれば、早めの相談が選択肢を広げます。詳しくは住宅ローンの返済が苦しくなったらをご覧ください

まとめ

変動金利の1%の上昇は、決して小さな変化ではありません。借入額4000万円〜8000万円のケースでは、月々の返済額で1万〜4万円弱、総返済額では数百万〜3,000万円超の増加インパクトになり得ることを、具体的な数値でご紹介しました。

また、5年ルール・125%ルールがあるからといって金利上昇のコストが消えるわけではなく、「未払利息」という形で先送りされているだけの場合がある、という点も重要なポイントです。返済額が変わらないことに安心せず、金利動向と自分のローンの残高・利息の内訳を定期的に確認する習慣を持っておきましょう。

繰り返しになりますが、本記事のシミュレーションはあくまで一定の前提を置いた簡易的な試算です。実際の返済額・利息額は、借入時期、金融機関ごとの金利改定ルール、ボーナス返済の有無などによって変わります。正確な金額を知りたい場合は、契約している金融機関の公式シミュレーターや、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言や住宅ローンの契約推奨を行うものではありません。シミュレーションは簡易的な試算であり、実際の返済額は金融機関の計算方法により異なります。正確な情報は各金融機関の公式シミュレーターやファイナンシャルプランナー等の専門家にご確認ください。

よくある質問

変動金利が1%上昇すると、月々の返済額はどれくらい増えますか?

借入額や返済期間によって異なりますが、たとえば借入額4000万円・返済期間35年のケースで当初金利0.5%から1.5%へ1%上昇した場合、月々の返済額はおよそ1万8千円増える計算になります。借入額が大きいほど増加額も大きくなり、8000万円なら3万7千円前後の増加が目安です。

変動金利が上がっても、5年間は返済額が変わらないと聞きました。本当ですか?

多くの金融機関が採用する「5年ルール」により、金利が上昇しても月々の返済額は5年間据え置かれるのが一般的です。ただし返済額の内訳(元金と利息の割合)は金利上昇に応じて変わっており、返済額が変わらないだけで負担が消えたわけではない点に注意が必要です。

未払利息とは何ですか?なぜ発生するのですか?

5年ルールで返済額が据え置かれている間に、その返済額では支払いきれないほど利息が増えると、差額が「未払利息」として繰り越される仕組みです。未払利息が発生すると元金がまったく減らない、あるいは残高が増えてしまうケースもあり、5年後の返済額見直し時に大きな負担増(支払いショック)につながります。

このシミュレーションの数値をそのまま自分のローンに当てはめてよいですか?

本記事の数値はあくまで簡易的な試算であり、実際の返済額は金融機関ごとの計算方法、借入時期、金利タイプ、ボーナス返済の有無などによって異なります。正確な金額は契約している金融機関の公式シミュレーターやファイナンシャルプランナーに確認してください。

戦略太郎 @kabu_strategy_g

医学生 × 個人投資家 × 個人開発者。日本株の需給・信用取引を中心に売買しながら、 相場の「しくみ」を数字で検証する記事と、投資計算ツールをNext.jsで開発・公開しています。