追証とは何か — 仕組みと回避するための資金管理

追証とは

追証(追加証拠金)とは、信用取引において保有ポジションの含み損が膨らんだ際に、証券会社から求められる追加の保証金です。

証券会社は貸したお金(信用)の担保として、一定の保証金(委託保証金)を要求します。この保証金の比率(委託保証金率)が一定水準を下回ると、翌日の正午ごろまでに追加の現金または株式を入金するよう求められます。

💡 自分のポジションで確認したい方へ:建玉・保証金・掛け目を入れると「何%の下落で追証になるか」を即座に計算する追証シミュレーターを用意しています。この記事を読みながら手元の数字を入れてみてください。

用語の整理——「委託保証金率」と「維持率」

追証の話でつまずきやすいのが用語です。まず3つを押さえましょう。

用語意味
委託保証金率(維持率)実質保証金 ÷ 建玉評価額 × 100。現在の担保の厚さを示す
委託保証金維持率(追証ライン)この率を下回ると追証が発生する下限。証券会社が設定(一般に20〜30%)
最低委託保証金信用取引に必要な最低金額(多くは30万円)

本記事で「維持率」と書くときは、現在の委託保証金率を指します。この維持率が追証ラインを割り込んだ瞬間に追証が発生します。

証券会社別・追証ラインの目安

証券会社追証ライン(維持率)備考
SBI証券20%制度・一般とも
楽天証券20%
マネックス証券20%
松井証券20%(30%で「追証予備軍」通知あり)

※実際の水準・判定時刻は各社の規定で変わります。必ず利用中の証券会社の説明を確認してください。多くの証券会社は前日終値ベースで夜間に判定し、通知が届きます。

追証が発生する仕組み

具体的な数字で見てみましょう。

前提:

  • 信用買い建玉: 100万円
  • 委託保証金(担保として預けた現金): 30万円

株価が10%下落した場合:

  • 含み損: 10万円
  • 実質保証金: 30万円 − 10万円 = 20万円
  • 委託保証金率: 20万円 ÷ 100万円 = 20%

多くの証券会社では、委託保証金率が20%(維持保証金率)を下回ると追証が発生します。

追証ラインとなる株価を逆算する

信用買いをした時点で「あと何%下落したら追証か」を計算しておけば、追証は事前に防げます。現金担保の場合、追証ライン到達までの下落率は次の式で求まります。

追証発生する下落率 x = (初期維持率 − 追証ライン) ÷ (100 + 初期維持率 − 追証ライン)

例:初期維持率30%・追証ライン20%

x = (30 − 20) ÷ (100 + 30 − 20) = 10 ÷ 110 ≒ 9.1%
→ わずか−9%の下落で追証

初期維持率が低いほど、耐えられる下落幅は驚くほど小さくなります。逆に初期維持率50%なら約−27%まで耐えられます。この違いは大きい。

より詳しい全パターンは何%の下落で追証になるかにまとめています。数字を入れて試すなら追証シミュレーターが便利です。

現金担保と「代用有価証券」で追証耐性は変わる

見落とされがちですが、保証金を現金で入れるか、保有株式(代用有価証券)で入れるかで追証の来やすさが大きく変わります。

  • 現金担保:株価が下がっても保証金(現金)の額は変わらない
  • 代用有価証券:保証金として入れた株も下落するため、建玉の含み損と担保価値の目減りが同時に起きる(二重の目減り)

さらに代用有価証券は時価の70〜80%(掛け目)でしか評価されません。詳しくは代用有価証券の掛け目を参照してください。同じ「維持率30%スタート」でも、代用有価証券主体のほうが急落に弱いのです。

追証が「連鎖」する怖さ

追証の最も恐ろしい点は、連鎖的に損失が拡大することです。

  1. 株価が下落 → 追証発生
  2. 翌日正午までに入金できない → 強制決済(売り)
  3. 強制決済の売り注文が相場にさらなる下落圧力をかける
  4. 同じ銘柄に信用買いを持つ他の投資家も追証に追い込まれる

機関投資家はこの連鎖を意図的に引き起こすことがあります。詳細は機関投資家に狙われやすい5つのタイミングを参照してください。

追証を回避する3つの原則

1. 委託保証金率を常に余裕を持たせる

維持保証金率(20%)ではなく、常に30〜35%以上を維持することを目標にしてください。株価が急落しても、30%からの余裕があれば追証を避けられることが多いです。

資金効率を高める信用取引の使い方では「現物:信用:現金 = 4:3:1」という比率を紹介していますが、信用枠を使い切らないことが根本的な防御です。

2. 追証ラインとなる株価を事前に計算しておく

信用買いをした時点で、「この株価まで下落したら追証が発生する」を把握しておきましょう。証券会社のシミュレーターを活用するのが実用的です。

3. ポジションを分散・軽くする

1銘柄に信用取引を集中させると、その銘柄が急落したときに一気に追証水準に達します。1銘柄あたりの信用建玉を全体の20〜30%以内に抑えることがリスク管理の基本です。

追証が来たら取れる選択肢

選択肢内容注意点
現金入金追加保証金を振り込む入金期限(翌日正午)を厳守
差し入れ保証金保有現物株を担保追加現物株が値下がりしていると効果が薄い
建玉の一部決済ポジションを減らして保証金率を改善損失が確定するが連鎖を防げる
何もしない強制決済になる最も損失が拡大するリスクがある

追証が来た時点で最も避けるべきは**「何もしない」**ことです。入金か一部決済か、どちらかを素早く判断することが損失を最小化します。時間軸に沿った具体的な立ち回りは追証が来てから正午までで、実際の損失額を比較しながら解説しています。

追証を「ゼロにする」唯一の方法

突き詰めると、追証を完全に回避する方法は**「委託保証金率が維持水準を絶対に割り込まないポジションしか持たない」**ことです。

  • 信用枠いっぱいまで使わない
  • 1銘柄への集中を避ける
  • 現金(流動性)を常に確保しておく

追証は「油断したとき」に来ます。相場が好調で信用建玉が増えた後の急落局面——こそが最も危険な瞬間です。

追証をさらに深く理解する(関連シリーズ)

この記事は追証の入り口です。より踏み込んだテーマは以下でまとめています。


免責事項: 本記事は筆者個人の見解をまとめたものであり、投資助言や売買推奨を行うものではありません。信用取引には元本を超える損失が発生するリスクがあります。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。